「外の世界」に打って出る女性たち
シム・シャオチェン
前アジアネットワーク客員研究員(マレーシア・南洋商報コラムニスト)
日本内閣府の「男女共同参画会議」が、2020年までに、行政、企業及び研究機関における女性の管理職の比率を30%までに上げることを目標とする報告書を小泉首相に提出した。
アメリカでは管理職の女性比率が45.1%であるのに対し、日本の管理職の女性比率はまだ8.9%に留まっている。
「男女共同参画会議」は、日本では経済や政治活動において女性の役割が完全に発揮されず、管理職の女性比率が国際的にも極めて低いレベルにあると指摘した。
厚生省が02年度に発表した「働く女性の実情」(『女性労働白書』)によると、女性が起業する動機は、「自分で起業すると年齢にこだわらないで働ける」(68.1%)、「興味の持てる仕事ができる」(67.1%)、そして「自分で仕事の量を判断する」(55.6%)。そのほか、「女性社員の昇進のチャンスが限られている」ことや、「女性が担当する仕事の範囲が限られている」などの回答もあった。全体的に見ると、女性の多くは、自分が女性であることが、企業や組織の中で昇進する際の障害になっていると認識していることが分かる。
女性たちが積極的に職場で性別を乗り越えようとするにつれて、女性起業家(female entrepreneur)も徐々に増えてきた。都市部と農村部の女性起業者は、子育てをしながら、どのように努力してきたのだろう。『南洋商報』は都市部と農村部で活躍している女性にインタビューし、その真相を検証してみた。
● 佐々木かをりさん(44)、イー・ウーマン代表取締役社長
日本の女性企業家といえば、女性サイト「イー・ウーマン」を設立した佐々木かをりさんを思い起こす人が少なくない。サイト会員の中心は30代のOLで、掲載内容は就職、暮らし、エステからレジャーなど、幅広く最新情報を提供し、「時代の鏡」との定評もある。
佐々木さんは、テレビのアナウンサーから転身した。87年、翻訳サービスなどのUNICUL Internationalを設立し、「20代独身女性社長」としてマスコミの脚光を浴びた。「マスコミはいつも女性という言葉を持ち出すが、私自身は特に性別を意識していない。起業するには男女差はないと思う」という。
佐々木さんによると、日本の男女の役割は社会の変化につれて昔とは変わってきている。戦前は貧しい家庭が多く、女性は結婚前後、農業や家業の手伝いをしなければならなかった。戦後は経済成長がピークに達し、男性が働くだけで家計が維持できるようになり、家で子育てに専念する女性が多くなった。「男が外、女は家の中」である。
しかし、最近は経済不振が続き、家計を支えるため共稼ぎせざるをえない夫婦も増えてきた。女性にとってはかえって選択の幅が広がり、就職に対する人々の考え方も大きく変わった。佐々木さんは、価値観の多元化が現代日本社会の特徴の一つだという。料理が得意で、家事も分担する男性も増えてきた。女性は結婚するしないにかかわらず、さまざまな選択ができるようになった。「私が幼稚園で子供の友達のお母さんに会ったら、相手は24歳なのに、子供がすでに三人もいることに驚いた。でも、あとで考えたら、子供が大きくなると、自分のやりたいことができてうらやましい」と佐々木さんは言う。
サイト(http://www.ewoman.co.jp/)の「win-win対談」シリーズでは、ビジネス分野のエリートたちにインタビューをし、成功の道を語ってもらっている。最初の15回シリーズは、男性企業家へのインタビューだったが、今後女性企業家へのインタビューも予定している。
会社設立から17年後、彼女の周りには女性社長が何十人もいるようになった。彼女自身も、二人目の子供が誕生してから「イー・ウーマン」サイトを開設した。女性起業家の多くが自分の事業に専念して成功を目指す人が多いのに対し、男性起業家の場合は、社交や人脈に力を入れる人が多い。成功するためには、女性も積極的に人脈を作らなければならない。個人の経験だけに頼ってしまうと、自分の世界が狭くなり、前進する余裕も少なくなる。ビジネス上の親友がいると足りない点を指摘してくれるから、成功しやすくなるという。
89年、佐々木さんはNAPWという女性サイトを開設し、96年には初めての国際ビジネス女性シンポジウムを開催し、大きな影響を及んだ。02年7月20日のシンポジウムでは宣伝しなかったにもかかわらず、732名の参加した。その中には、ビジネス雑誌で佐々木さんのインタビュー記事を読んで参加を決めた台湾人女性もいた。
こシンポジウム参加者の平均年齢は35歳。70%の人はバイリンガルである。平均年収は660万円(約21万リンギ)である。活発な議論や積極的な質疑を通して、いまのキャリアウーマンは考え方がはっきりしていて、目標に向かってがんばっていると強く感じたと佐々木さんはいう。
「起業段階では、自分が女性であることを強調せず、幅広い人脈ネットワークをつくることが経営のコツで、非常に重要。男性起業家とも意見を交換し彼らから経験を吸収することが、成功につながる」と佐々木さんは話している。
● 農村女性も活躍
日本の農村は現在、高齢化や少子化問題など多くの課題に直面している。そうした中で打ち出された「道の駅」運動は、就業機会と収入を農村にもたらしている。農村の女性も7000項目近くの女性創業活動を行い、利益を受けると同時に自分の技術や知識も上達させ、実力を現し始めている。
日本の国際協力銀行企画開発部で技術顧問を担当する鹿野和子さんは、国連人口基金(United Nations Fund for Population Activities、略称UNFPA)で20年間仕事をした経験があり、技術援助を提供するため、40ヶ所以上の「道の駅」を訪れてきた。
「道の駅」は民間と地方政府が共同で経営し、農民が実際に企画や経営に参加しており、農産品収入の多くが農民のポケットに還元されている。また、交通事故の減少や環境保護のために、国民意識運動も同時に取り組んできた。
この「道の駅」理念は93年日本の国土交通省によって打ち出され、農村に新たな活力を注がれ、農民の収入も増えた。
10年後の現在、「道の駅」概念はタイにも導入され、地元の農民や指導者に大いに歓迎されている。タイでは日本モデルを参照した「道の駅」が4カ所作られており、地元の特徴と風俗を見せようとしている。
スタッフの多くは女性である。千葉県富浦「道の駅」は地元の就業機会を増やし、高い業績を出しているが、50名のスタッフのうち、90%が女性である。岐阜県の「道の駅」は24箇所だが、245名のスタッフのうち、71%(174名)が女性。農村の女性は家事や農業の合間を利用して「道の駅」で働き、生活費を稼いでいるのだ。
今日までに「道の駅」では7000以上の女性起業活動が行われたが、農村の女性や高齢者は、自分で企画し市場を探すなど、潜在能力を発揮するようになった。地元の名物野菜で自慢料理を作ったり、お祭りや祝日に自家製の農産品や加工品を販売したり、機会を上手に活用して収入を増やしている。
女性創業活動以外にも、現在、日本全国では「道の駅」の女性駅長が五名いる。兵庫県に二人、新潟、静岡、奈良県のそれぞれに一人ずつである。女性駅長の数はまだ多くはないが、彼女たちは畑や民宿から外の世界に出てきて、女性起業家の信念を見せている。少人数の駅員とともに、農村の新しい未来を築いていくだろう。
*Posted to Asahi website on 2003/09/18.
(http://www.asahi.com/international/aan/kisha/kisha_015.html)
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